恐怖を感じることは正常な反応ですが、過剰に不安や恐怖を感じる状態が継続されてしまうと精神疾患につながるおそれがあります。そのため不安や恐怖への対処法を知れば、日常生活に役立つだけでなく、精神疾患の予防にも生かすことができます。

恐怖への対処法としては、エクスポージャー療法と森田療法が有効です。
この2つの考え方を身につけておけば恐怖をコントロールすることができます。

なぜならエクスポージャー療法も森田療法も恐怖に対する心理療法だからです。
エクスポージャー療法については強力なエビデンスがあるので、知識として知っておくだけでもかなり役立ちます。

前提として、今回紹介する方法はあくまで日常レベルの恐怖に対処する方法として紹介しますので、過剰な不安・恐怖が続く場合は病院へ行ってくださいね。

まず、恐怖についての基礎知識をお伝えして、その後、2つの心理療法について解説します。

恐怖のメカニズム

心理学的には、恐怖は不安と区別されますが、(恐怖は特定の対象あり、不安は特定の対象なし)同一線上のものであると考える説もあります。

たとえば、プルチック(2001)は、「感情の2次元モデル」を提唱し、不安の延長線上に恐怖感情があることを示しました。

私たちがなぜ恐怖感情を抱くかというと、脳の扁桃体を中心とした回路が発火(活動)しているからです。

扁桃体は12の領域に分けられますが、その中でも中心核が恐怖感情の生成に強く関わっていることがわかっています。実際、中心核を損傷した動物は嫌悪刺激を提示しても恐怖反応をみせません。たとえば人が手で触れても大人しく、ストレスホルモンの血中レベルも低い状態を維持します。

深掘りしておくと、恐怖は嫌悪刺激によって起こります。

たとえばラットにベルの音と電気ショックを同時に提示し、その後、ベルの音だけ鳴らしても、電気ショック時と同等の生理的反応を示します。これは古典的条件付けと呼ばれます。もちろん人間も同じです。

ここまで恐怖について少し詳しく解説しました。
ここからは本題の恐怖への対処法であるエクスポージャー療法と森田療法について解説します。

エクスポージャー療法

恐怖に対処する1つ目の方法はエクスポージャー療法です。
エクスポージャー療法とは、恐怖を感じる刺激にさらすことでそれに慣れていく心理療法です。

不安階層表(10~100まで恐怖場面を分ける表)をつかって自覚的障害単位が低いものから順に実際の刺激に慣らしていきます。

エクスポージャー療法は元々、行動療法(ウォルピの系統的脱感作法)から発展しました。
系統的脱感作法とは、筋弛緩でリラクゼーションを行い、その状態で恐怖刺激にさらす心理療法のことです。専門的には不安とリラクゼーションという相反することを行う拮抗的条件付けを利用した方法論になります。

この系統的脱感作法は科学的にも効果が認められているのですが、さらに細かく分析していったところどうもリラクゼーションというより恐怖にさらすという点に効果があることがわかってきました。

そこで、系統的脱感作法からリラクゼーションを抜いてみようという発想が生まれたわけです。
それがエクスポージャー療法です。

お伝えしたとおりエクスポージャー療法とは、恐怖刺激にあえてさらす方法です。
たとえばジェットコースターが怖い人ならまずは子ども向けのジェットコースターに乗るなどです。

ただ、気をつけなければならないのがフラッディング法と呼ばれるやり方です。

普通、エクスポージャー療法は、恐怖刺激が低いものから順番にさらしていくわけですが、フラッディング法ではその逆をやります。つまり、いきなり恐怖刺激が強いものからさらすわけですね。

しかし、このやり方は倫理的問題が指摘されており、臨床心理士など心理の専門家は基本やりません。
こういうことをやっている民間カウンセラーがいたとしたら、警戒した方が良いでしょう。

森田療法

恐怖に対処する2つ目の方法は森田療法です。森田療法は日本人の森田正馬によって開発されました。
簡単に言うと、恐怖があってもあるがまま、自然のままにしておきましょうという心理療法です。

森田療法のキーワードは「とらわれ」「はからい」「あるがまま」「目的本位」の4つです。それぞれ解説していきましょう。ここでは「自分の手にバイ菌がついて手洗いが止まらない」という強迫症のケースを例に考えてみます。

自分の手にバイ菌がついているかもしれないというのは「とらわれ」です。そしてそのバイ菌を取り除く手洗い行動が「はからい」です。この「とらわれ」「はからい」が予期不安と共に悪循環を引き起こし、神経症状態を維持してしまうのが「精神交互作用」と呼ばれます。

この循環を断ち切るために必要なのが「あるがまま」です。「あるがまま」とは症状にとらわれたり取り除こうとしたりすることを手放し、症状を受容するということです。これが森田療法の最重要ポイントです。

「あるがまま」にしてどうするのかというと、「目的本位」の活動をします。「目的本位」とは本来の活動をするということです。森田療法では主に家事などが想定されています。

つまり、本来やるべきなのに症状によってできなくなっていることをすることが「目的本位」です。

余談ですが、森田正馬は学生時代に神経症に悩みました。特に赤面恐怖症に悩んでいたようです。

森田はこの症状を抑えるために精神薬を服用していたのですが、症状のせいで成績が落ちてきて、親から薬を送ってもらえなくなってきました。しかし、森田にとって精神薬はなくてはならないものなので、必死に勉強しました。

そうすると、いつのまにか神経症が治っていたというわけです。ここから森田は「あるがまま」という概念を生み出したということです。

ですが、残念ながら「森田療法=あるがまま」と捉えられ、「あるがままにしなければ」とまるで義務かのように捉えている人が多いです。

森田が神経症中に「あるがままにしなければ」と考えていなかったのは、森田が神経症を克服した体験からも明らかでしょう。森田は夢中で勉強しただけです。

この森田のエピソードは神経症に苦しむ人にとってかなり参考になるのではないかと思います。

森田療法に関しては↓の本がオススメです。
新書ですが一冊で森田療法のことが詳しく理解できます。

というわけで、今回は以上です。

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