今回の記事では、
・大学で学ぶ心理学はイメージと違うって本当?
・学問としての心理学ってどんなことが学べるんだろう?
こういった疑問にお答えします。
心理学で人の心が読めるは嘘
「心理学を学べば人の心が手に取るようにわかる」と考えて、心理学を学ぼうと考える人は多いようです。
実際、アメリカのテキストなどでは、「心理学者です」と紹介するとたいていの場合、「私の心が読めるか賭けてみましょう」と言われると記載されたりしています。
では、心理学を学べば人の心を読めるようになるのでしょうか?
結論からいうと、心理学を学んでも人の心を読めるようにはなりません。
なので、心理学の専門家である臨床心理士であろうが心理学者であろうが、相手の心を読める人はいません。
もう少し深掘りすると、人の心を読める人はこの世に存在しません。
これは虚偽検出の科学分野で明らかにされています。
虚偽検出の科学とは、ざっくりいうと嘘の見抜き方を研究する分野です。
この分野で最も研究がまとまっている書籍はアルダート・ヴレイの『嘘と欺瞞の心理学』です。
600ページを超えるこの書籍では、これまでの嘘に関する過去の膨大な研究データを紹介し、嘘を見抜くための指標を検討しています。
その結果、ピノキオの鼻のように嘘の指標を表わすものは存在しないことが明らかになりました。
唯一、指標に近いものとしては瞳孔が挙げられていますが、それでも70%程度の正確性であり、100%嘘を見抜く指標とはなりません。
つまり、確実に相手の心を読める人は存在しません。
ちなみに嘘を見抜く確率が高い職業は、FBI・CIAなどの捜査官、秘書などです。
警察官は50%程度の確率でしか嘘を見抜けないことがわかっています。
メンタリズムと混同される心理学
心理学と聞くと、メンタリストのDaiGoさんを思い浮かべるのではないでしょうか?
フォークを曲げたり、ババ抜きで相手のカードを当てたり。
これが心理学だと思っている人は多いと思います。
しかし、それはパズルゲームと数学を混同しているようなものです。
心理学は、哲学・数学・経済学などと同じくきちんとした学問です。
そのため、DaiGoさんが行なっているようなメンタリズムを心理学だと勘違いして大学の心理学部に入学するとイメージと全然違ったということになります。
実際、冒頭にもあったとおり「大学で学ぶ心理学はイメージが違う」という話はよく聞きます。
これは楽しいパズルゲームで遊べると思っていたら、現実は方程式や関数などの難解な数学を学ぶ場だったという状態に似ています。
心理学部では何が学べるか?
では、大学の心理学部では一体何を学ぶことができるのでしょうか?
具体的には、以下のとおりです。
・認知心理学
・学習心理学
・発達心理学
・社会心理学
・産業心理学
・臨床心理学
心理学といってもその幅は広く、実際には上記に挙げたもの以外にも多数の分野が存在します。例えば、健康心理学・宗教心理学などがあります。
大学では上記の心理学を中心に幅広く心理学を学んでいきます。
その後、大学院で特化した1領域の心理学を専門的に学んでいきます。
例えば、臨床心理学を専門にすると、将来は臨床心理士になって心理職として勤務していくことになります。
心理学の種類については↓の記事について詳しくまとめています。
心理学を大学で学ぼうとする人へ
ここまでお伝えしてきた通り、心理学という学問は大きく誤解されています。
世の中には残念ながら、心理学を謳った詐欺まがいの講座や資格、「女性を落とす〇〇心理学」といったようなしょうもない本があふれています。
しかし、心理学は本来このようなものではありません。
れっきとした学問の1つです。
これから大学で心理学を学びたいという方は、この点を覚えておくと良いと思います。
数学や経済学のように心理学も学問であるとあらかじめ考えておけば、大学に入学してからイメージが違うということは防げます。
僕は現在、大学院で心理学を専攻していますが、心理学を学問として学べることはとても楽しいものです。
心の仕組みを科学的に学び、それを支援に生かすことができます。
真剣に心理学を学びたい方はぜひ大学で心理学を学ばれることをおすすめします。
とはいえ、学問としての心理学が本当に自分に合うか心配だという人もいるでしょう。
そこで、一度、心理学の学問書を読んでおくと良いと思います。
心理学の専門書を2冊紹介しますので、本を読んで自分の肌に合うかどうか確認してみてください。
「これは楽しい!」と直感的に感じられたら大学で心理学を学ぶことを検討してみてください。(個人的にはこういのは直感が大切だと思っています)
心理学の入門専門書
『心理学(新版)』
入門専門書として最もおすすめなのは、有斐閣の『心理学(新版)』です。
おすすめする理由は、認知心理学・臨床心理学・社会心理学・発達心理学という現代心理学で中心的な役割を果たしている分野に焦点を当てながらも、心理学全体を学べる網羅性を持つ概論書になっているからです。
前書きによると、著者は心理学の専門職になる学部生を想定して本書を執筆しています。
そのため、入門書でありながら大学生を対象としており、専門書としての機能も果たしています。
ページ数は多いですが、平易な言葉で解説されており、学問としての心理学全体を学びたい初学者におすすめです。ただ、はじめの方に心理学統計について記載があるので、そこは後回しに読んだ方が良いかもしれません(統計は結構複雑なため)。
『ヒルガードの心理学 16版』
大学で心理学を学んでいる人なら知らない人はいない有名な専門書です。
世界で最も大学の心理学の教科書として使用されています。
1000Pに及ぶ膨大なページ数ですが、カラーで図解が多く、平易な文章で説明もわかりやすいという良書です。ページ数に見合うだけの専門性もある書籍で、初学者にもある程度心理学を学んだことがある人にもおすすめです。
大型本で2万円ほどするのがネックですが、わかりやすさと専門性の高さでは文句なしという書籍なので、余裕がある方は一読をおすすめします。
元値は十分回収できる内容になっています。
というわけで、今回は以上です。