【記憶の心理学】記憶のメカニズムと脳科学的勉強法を解説してみた

[word_balloon id=”2″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” name=”生徒” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]心理学で記憶はどう考えられているんだろう?
効率的な勉強法はあるのかな。[/word_balloon]

こういった疑問にお答えします。

この記事を書いている僕は、国立大学院で心理学を専攻しています。
ブログ・Youtubeなどでの情報発信は3年ほどです。

記憶とは?

記憶とはある情報を覚えて思い出す過程のことを指します。

心理学では、記憶は「記名→保持→想起」という過程で行われると考えられています。

記名とは情報の入力、保持とは入力された情報を保つこと、想起とは保持した情報の中から手がかりをもとに情報を思い出すことです。

たとえば、アルツハイマー型認知症では、記名がうまく行われていないことがわかっています。

記憶の種類

記憶は保持時間と容量によって以下の3種類に分けられます。

・感覚記憶
・短期記憶
・長期記憶

感覚記憶は視覚、聴覚などから入力された情報をそのまま保持する記憶のことです。

具体的には視覚情報を保持するアイコニックメモリ、聴覚情報を保持するエコイックメモリなどがあります。アイコニックメモリの容量は比較的大きいとされていますが保持時間は1秒程度です。

短期記憶は注意を向けた情報を15~30秒程度保持する記憶のことです。

容量は7±2チャンクだといわれています。チャンクとは情報のまとまりのことを指す用語です。つまり、短期記憶で保持できるのは5~9個程度の情報です。

長期記憶は理論上、保持時間無限・容量無限の記憶です。
ただし、想起に失敗することはあります。

長期記憶の種類

スクワイアという学者は長期記憶をさらに以下の2種類に分類しました。

・宣言的記憶
・非宣言的記憶

少し専門的になりますが、宣言的記憶とは顕在記憶のことです。
顕在記憶とは意識に上がる記憶です。

一方、非宣言的記憶は潜在記憶のことです。
潜在記憶とは意識に上がらない記憶のことです。

宣言的記憶

宣言的記憶はさらに意味記憶とエピソード記憶に分類されます。

意味記憶とは辞書的な情報の記憶です。
たとえば、目の前のコップがコップだとわかる記憶です。

エピソード記憶とは体験の記憶です。
高校生の頃、彼女にフラれた記憶などはエピソード記憶に含まれます。

意味記憶とエピソード記憶の違いは、想起する際に記名時の体験を思い出す必要があるかどうかです。

コップを思い出す時、コップをコップだと覚えた日のことを思い出す必要はありません。

しかし、高校生の頃、彼女にフラれた体験を思い出そうとすると嫌でもその日のことが思い浮かびます。

このように意味記憶とエピソード記憶は、想起する際に記名時の体験を思い出す必要があるかどうかによって分類されます。

非宣言的記憶

非宣言的記憶はさらに手続き記憶・プライミング・条件付けに分類されます。

手続き記憶とはやり方の記憶です。
自転車の乗り方、掛け算のやり方などが含まれます。

プライミングとは先行情報が後続の情報に影響を与える現象を指します。リンゴの話をした後に「赤くて丸いものは?」と聞かれると、「リンゴ!」と答えてしまうのはプライミングが働いたからです。

条件付けとは簡単にいうと学習のことです。
学習といっても勉強のことではありません。

たとえば、私たちは赤信号で止まりますが、生まれつき赤信号で止まっていたわけではありません。

生まれてから生活するうちに学習していったのです。

非宣言的記憶は無意識的な記憶である点に特徴があります。

自転車の乗り方を正確に意識に上げることはできません。
しかし、私たちは自転車に乗ることはできます。

赤信号を渡ってはいけないことはわかりますが、「赤信号」=「渡らない」という結びつきがなぜ起こっているのかを意識で考えてもわかりません。けれど、もし実際に信号を無視すれば、罪悪感を感じます。

このように非宣言的記憶は無意識的な記憶です。

短期記憶を長期記憶に移行する

長期記憶は保持時間・容量ともに無限であるという話をしました。

保持時間も容量も無限なんて長期記憶はすごいですね。

では、脳はどのようにしてこ長期記憶を生み出しているのでしょうか?

結論をいうと、短期記憶からの移行です。

実は短期記憶は、長期記憶に移行する可能性を持った記憶です。
「短期記憶をどのように扱うのか?」それが長期記憶を生み出す鍵です。

短期記憶が長期記憶に移行される条件は以下の2つです。

・維持リハーサル
・精緻化リハーサル

維持リハーサルとは機械的な復唱です。
つまり、繰り返し復習することですね。

一方、精緻化リハーサルとは既存のスキーマへの関連付けを行い、情報を深く理解することです。既存のスキーマとはその人が元々持っている情報体系です。

これに短期記憶の情報を関連づけて理解することで長期記憶に移行することができます。
つまり、納得ですね。

脳科学的勉強法

脳はアウトプット型で記憶する

短期記憶を長期記憶に移行する方法として維持リハーサルと精緻化リハーサルがあると話しました。

維持リハーサルについて1つ付け加えておくことがあります。
それはアウトプットを中心にすることで維持リハーサルの効率がよくなるということです。

維持リハーサルとは簡単にいうと復習のことです。
復習とは何度もその情報に触れるということです。

脳は何度も触れる情報は重要だと考えます。
そしてこの「触れる」は、具体的には「どれくらい使うか?」です。

そのため、同じ復習をするなら「使う」に焦点を当てた方が効率が良いのです。

つまり、維持リハーサルを行う前提で考えた場合、脳科学的に正しい勉強法とはアウトプット型の勉強法です。

子どもは何百匹といるポケモンの名前を覚えています。
それどころか、そのポケモンが何タイプでどこで出てきて何レベルで進化するかまで覚えています。

この情報量は高校生が暗記しなければならない情報量に匹敵するでしょう。

なぜこのようなことが可能なのか?

好奇心など様々な要因はありますが、中心的な理由はアウトプットの量に求めることができます。

子どもはポケモンについて覚えたことをとにかく人に話しまくっているわけです。

だから、大量の情報を覚えることができます。「どれくらい使うか?」という脳のメカニズムに合致した行動を取っているのです。

「勉強はアウトプット型で」

これが記憶のメカニズムに即した勉強法の原則です。

具体的な勉強法

「脳はアウトプット型で記憶する」

これを前提に考えると、具体的な勉強法は自ずと絞れられきます。

記憶のメカニズムに即した勉強法は以下のとおりです。

・参考書<問題集
・ノートにまとめる
・人に話す

それぞれ解説していきます。

参考書<問題集

多くの人は参考書で勉強してから問題集を解きます。

つまり、「参考書→問題集」の順番ですね。インプット・アウトプットの関係でいうと「インプット→アウトプット」です。

しかし、記憶のメカニズムを基準に考えた時、これは効率良い勉強法だとはいえません。

効率が良い勉強は「問題集→参考書」の順番です。逆なんですね。これだと「アウトプット→インプット」となり、アウトプット型の勉強法になります。

具体的にはわからないなりにいきなり問題集を解き、わからない箇所はすぐ回答を確認する。それでもわからなければ参考書で確認するという流れです。

特に何らかの試験を控えている場合、過去問をこの手順でやると効率よく成績を上げることができます。

ノートにまとめる

覚えたことをノートにまとめる勉強法も効果的です。

一見、非効率的に見えますが自分の中に入っている情報をノートに書き出す作業ですから、アウトプット型の勉強法で効率が良いです。

ただ、参考書に書いている文字を書き写すだけでは意味がないので、読んだ箇所を自分なりにまとめて書き出してみると良いでしょう。

人に話す

覚えた情報を人に話すのは最も効率の良い勉強法です。作業としては先ほどのノートにまとめるのと同じです。書き出す部分が文章から口頭での言葉になるだけです。

話し相手がいない人は人形に話しかけるのも良いですし、限定リンクで1人Youtuberとしてカメラに話すのも効果的です。僕自身は覚えた情報はすぐに人に話すようにしています。

いろいろ勉強法を学んできましたが、この人に話すが最も効率が良いと感じています。

紹介した勉強法は一例に過ぎませんが、いずれにせよ勉強法を選ぶ時は、アウトプット型かどうかを確認してください。

アウトプット型の勉強法ならば努力が無駄になることはないでしょう。

 

最後にさらに理解を深めるためのおすすめ本を紹介しておきます。

『受験脳の作り方』です。

この本では記憶のメカニズムに沿った脳科学的に正しい勉強法が紹介されています。
著者はアルツハイマー型認知症の世界的な研究者である池谷裕二先生です。

個人的にはこの本に出会ってから成績がかなり上がりました。

もう少し専門的に記憶について学びたい方は『記憶力を強くする』という本がおすすめです。
ブルーバックスというサイエンス系の本なので科学的に理解できます。

というわけで今回は以上です。

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