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心理学を悪用することってできるの?他人の心を操ることができたら面白そうだな。友達の心を自由に・・・なんてそれは無理かな?
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こういった疑問にお答えします。
この記事を書いている僕は、国立大学院で心理学を専攻しています。
心理学を悪用することは可能か?
心理学の情報発信を続けていると「心理学を悪用することは可能か?」と尋ねられることがあります。
結論からいうと可能です。
利用するのはバイアスや心理テクニックです。
人間には認知の偏りが存在します。
専門的にはバイアスと呼ばれます。バイアスとは偏ったものの見方のことです。
例えば、ハロー効果と呼ばれるバイアスは、1つの優れた能力から他の能力も優れていると勝手に推測してしまう現象です。
具体的には英語をしゃべっている人を見て、仕事ができると考えてしまうなどです。このようなバイアスは200以上存在しており、これを利用すれば簡単に人の心を動かすことができてしまいます。
また、悪用されやすい心理テクニックも存在します。
詐欺師や占い師は心理テクニックを利用して人を騙します。
この記事では悪用されやすいバイアスと心理テクニックを解説します。
悪用されやすいバイアス一覧
悪用されやすい代表的なバイアスは以下の通りです。
・単純接触効果
・ハロー効果
・バーナム効果
・プライミング
・確証バイアス
単純接触効果
「はじめはあの人のことが苦手だったのに今はそうでもなくなった」
こんな経験があるなら、そこには単純接触効果が隠れているかもしれません。
単純接触効果とはその名の通り何度も接触することで親近感が湧くというバイアスです。提唱者の名前を取って、ザイアンス効果とも呼ばれます。このバイアスはよく知られていますし、現象としては単純です。
単純接触効果を利用すると、元々苦手な人や物であっても接触を繰り返すことで苦手意識が薄れ、最終的には真逆の「良い」という印象を持つ可能性もあります。
「嫌い」→「良い」と変化する可能性があると考えると、強力なバイアスといえますね。
ハロー効果
冒頭でも紹介しましたが、ハロー効果とは1つの優れた能力から他の能力も優れていると勝手に推測してしまう現象です。ハロー効果は主に社会心理学の用語で後光効果とも呼ばれます。提唱者はソーンダイクです。
後光とは後ろから聖光が差すという意味です。
例えば、特定の専門家が他の専門分野にも詳しいと考えたり、1つの教科が優れていると他の教科も優れていると考えたりしてしまいます。
ハロー効果を使えば、何か1つの専門分野に特化した人間が他分野で大きな影響力を持つことも可能です。なお、ハロー効果には反対の現象もあります。つまり、何か1つの特徴が著しく悪いと、他もよくないと考えられてしまいます。
バーナム効果
バーナム効果は、個人を占うなどの前提がある場合、誰にでも当てはまる記述を自分だけに当てはまると感じてしまう現象です。提唱者はバートラム・フォアラーです。
占いがなぜ当たるのかは、このバーナム効果で説明可能です。
例えば、占い師がよく使う話法にアンビバレントというものがあります。これは人には明るさ・暗さの両面性があることを前提にしたテクニックで、明るそうな人には暗い点を、暗い人には明るい点を指摘します。具体的には次のような話し方です。
(明るそうな人に対して)「普段は明るくて友達が多いタイプですが、家で独りになると落ち込みやすいタイプですね。」
よく考えれば誰にでも当てはまることなのですが、バーナム効果が働くことにより「当たってる!」と感じてしまいます。
プライミング
プライミングは先行刺激が後続の情報処理に影響を与える現象のことです。専門的には非宣言的記憶に分類される、記憶現象の一種です。
例えば、リンゴの話をした後に「赤くて丸いものを直感で1つ答えてください!」と突然言われると、「リンゴ」と答えてしまいがちです。これは「リンゴの話」という先行情報が、後の質問から思い浮かぶ事象に影響を与えたことによります。
プライミングを上手く利用すれば、印象操作や記憶操作が可能になります。
確証バイアス
確証バイアスとは自分の主張に合ったデータばかりを収集して、その反証となるデータを無視したり集めない現象です。
学者はこの確証バイアスの影響を受けないようにするため、自分の主張に合う論文だけではなく、反証論文も詳細に検討します。
しかし、一般人が論文をもとに何かを主張しようとすると確証バイアスに犯され、自分の主張に合ったデータばかりを示してしまうでしょう。
このような行動は嘘の情報を正しいと思い込ませてしまう危険性があります。
悪用されやすいテクニック一覧
続いて、悪用されやすい心理テクニックを紹介します。
・フット・イン・ザ・ドア & ドア・イン・ザ・フェイス
・ダブルバインド
・ペーシング
フット・イン・ザ・ドア & ドア・イン・ザ・フェイス
フット・イン・ザ・ドア
フット・イン・ザ・ドアとは、小さな承諾から始めて最終的により大きな承諾を得るためのテクニックです。訪問販売に来た営業マンが玄関のドアに爪先を挟んで「なんとか話だけでも」と懇願してきます。
「しつこいし話だけならいいか…」と思って家に上げたら知らぬ間に大きな買い物をしていた、なんてことが起こります。これがフット・イン・ザ・ドアです。
「家に上げる」という小さな承諾が「商品を買う」という大きな承諾に繋がるのです。
ドア・イン・ザ・フェイス
ドア・イン・ザ・フェイスは、フット・イン・ザ・ドアとは逆のやり方で承諾を得るテクニックです。先に大きなお願いをして、断られた後で本当に頼みたいことを承諾させます。
このテクニックは値切りの際によく使われます。最近ではメルカリであからさまにドア・イン・ザ・フェイスを利用している人が多いですね。
例えば、5000円の商品に対して「すみません、1000円でお願いできませんか?」とコメントしている人は、ドア・イン・ザ・フェイスを利用しています。
5000円の商品に対して「1000円でお願いできませんか?」と尋ねられると当然出品者は断ります。ただ、少し罪悪感が湧きます。ドア・イン・ザ・フェイスを利用する人はこの罪悪感を狙うのです。
すかさず、「では、4000円ではどうでしょうか?」
本来の狙いは5000円の商品を4000円で購入することだったわけです。
ドア・イン・ザ・フェイスを使うと一気に承諾率が上がります。
ダブルバインド
ダブルバインドはベイトソンが提唱し、ミルトン・エリクソンがテクニックとして利用しました。元々は二重のメッセージを差す言葉で、現在でいう統合失調症の研究から得られました。
現在のダブルバインドは、いわば前提を飛ばして選択肢を提示するテクニックです。
この技法は詐欺などかなり幅広く悪用されています。精神科医の岡田尊司さんが著書『マインドコントロール』の中で、「ダブルバインド」の悪用について警鐘を鳴らしているほどです。
例えば、男性が女性をを食事に誘う際、「最近、美味しい店2つ見つけたんだけど、パスタがいい?それともピザがいい?」と尋ねるのがダブルバインド(二重拘束)です。
「今度、食事行かない?」だとYes / Noで答えられるので、断られる可能性があります。
しかし、ダブルバインドを利用した尋ね方だとどちらを女性が選んでも食事にいくことに対してはYesになるのです。
ペーシング
精神科医で催眠の大家ミルトン・エリクソンのテクニックです。ペーシングとは、相手に話しかけることなく信頼感(専門的にはラポール)を抱かせるテクニックです。元々は催眠誘導のためのテクニックの1つです。
やり方は簡単で、相手の呼吸のペースと自分の呼吸のペースを合わせるだけです。相手が息を吸った時は自分も息を吸い、相手が息を吐いた時は自分も息を吐きます。
呼吸を合わせることができたら、しばらくその状態を継続します。
具体的には5分〜10分程度です。
すると、何もしていないのに次第に相手がリラックスして信頼感を抱き始めます。
これペーシングです。
呼吸を合わせる際のポイントは相手の肩を見ることです。
人の呼吸は肩の動きに現れます。
悪用は一時的な効果、長期的には信頼を失う
ここまで紹介してきたバイアスやテクニックを悪用すれば、他人を騙したり、心理操作したりできる可能性があるでしょう。
けれど、残念ながらバイアスやテクニックはどれも一時的なものです。
例えば、恋愛に悪用しようと考えて、ハロー効果を利用して彼女を作れたとします。
しかし、一緒に過ごすうちにバイアスの皮は剥がれて「この人英語はできるけど他は全然ダメじゃん」なんて思われて振られることになるのがオチです。
このようにバイアスやテクニックを悪用するとあなたは一時的に得するかもしれませんが、それは文字通り「一時的」に過ぎません。バイアスやテクニックを利用した付け焼き刃では、長期的には相手の信頼を失います。
他人に影響を与えたいなら、根本的に信頼される人間になることです。
その上でバイアスやテクニックを利用して信頼度をさらに高めるのならあなたの強い味方になってくれるでしょう。
ここを誤解してバイアスやテクニックだけを学ぼうとする人たちはたくさんいます。
けれど、それは実は遠回りなのでおすすめできません。
バイアスやテクニックの利用はあくまでスパイスのようなものです。
スパイスをかける料理がしっかりしていないとただ辛いだけです。
最後にバイアスやテクニックについて記載されている良書を2冊記載しておきますね。
この本の巻末には220を超えるバイアスが記載されています。
個人的には辞書的に利用しています。
2種類出版されていますが、購入の際は上記と同じ完全版をご購入ください。
社会心理学の名著で強力な心理テクニックが紹介されています。
よくあるテクニック本ではなく、研究に裏付けされた有効なものばかり紹介されています。
こちらも実践編や戦略編など様々出版されていますので、ご購入の際は上記の最新版を購入してください。
というわけで、今回は以上です。