[word_balloon id=”2″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]アドラーってよく聞くけど、どんな人で何を考えた人なんだろう?アドラーについて詳しく学べる本があれば知りたいな。[/word_balloon]
こういった疑問にお答えします。
この記事を書いている僕は、国立大学院で心理学を専攻しています。
アドラーとは?
アドラーはオーストリアの精神科医であり心理学者です。
アドラーは、ユングなどと同じくフロイトの共同研究者にあたります。(アドラーはフロイトの弟子であると思われることが多いのですが、正確には共同研究者です)
日本ではアドラーの心理学はアドラー心理学と呼ばれますが、専門的にはアドラーの心理学は個人心理学と呼ばれます。個人心理学の「個人」とは「分割できない個人」という意味です。
個人心理学では個人の主体性を重視します。個人心理学はカウンセリングなど心理支援を専門にする臨床心理学の学派では、人間性心理学に属するとされています。
余談ですが、残念ながら心理学の世界には、新しい心理療法を一般に広めずに専門家だけで独占しようとする傾向があります。
個人心理学もその対象となり、アドラーも独占を持ちかけられました。
しかし、アドラーは断ったようです。
個人心理学はすべての人たちに開かれたものである必要があると。
このようなアドラーの態度は現在まで個人心理学に反映されており、幅広い分野の人たちが個人心理学を学んでいます。
勇気の心理学
アドラーの個人心理学は勇気の心理学と呼ばれることがあります。
アドラーは身体器官に損傷がある場合、身体はそれを補償する機能を持っていることに気づきました。アドラーがこのことに気づいた1つの理由は、自信が幼い頃、声帯痙攣を持っており、それを克服した体験があったからだと言われています。
この気づきは心理面にも派生し、アドラーは劣等感においても身体と同じように補償が生じると考えました。そして、この補償作用が生じるのは他人に対する優越性の追求によるものだと考えました。これは専門的には「権力への意志」と呼ばれます。
補償が成功している場合は、社会的に適応状態にある一方、補償に失敗している場合は過剰補償となり、強迫的で不自然、他人を無視するようになります。アドラーはこのような補償の失敗はコンプレックスを生じると考えました。
このようにアドラーは劣等感を扱ったことから、彼の心理学は勇気の心理学とも呼ばれることもあります。
個人心理学の内容
個人心理学の理論的特徴は、以下の5つに集約されます。
1. 全体論
2. 目的論
3. 認知論
4. 対人関係論
5. 共同体感覚
1. 全体論
アドラーは個人をそれ以上分割できない存在であると考えました。つまり、心や身体の要素から個人が成り立つのではなく、全体で分割できない個人だという考え方です。
個人心理学では「心 vs 身体」「 思考 vs 感情」など、一般的には対立し葛藤を生むと考えられているものは、相互に協力して全体として目的を達成するように働くと考えます。
これを全体論と呼びます。
2. 目的論
個人心理学の中で最も特徴的な理論です。
フロイトの心理学をはじめ、多くの心理学では過去のトラウマが原因で現在に問題が生じていると考えます。しかし、個人心理学は真逆の考えを持っています。未来に目的があるから現在に問題が生じていると考えるのです。
具体例を挙げましょう。例えば、「仕事にいくことができない」という問題を抱えたクライエントがいるとします。こんなとき通常、セラピストは「過去にどんなトラウマがあるんだろう?」とその原因を考えます。しかし、個人心理学ではトラウマは存在しないと考えます。
そうではなく、未来のメリットを考えます。つまり、現在の問題行動はある目的を達成するために行われていると考えるのです。
この場合だと「仕事にいかなければしんどい思いをしなくて済む」といった目的を達成するために「仕事に行かない」という問題行動が維持されていると考えます。
これが目的論です。
3. 認知論
個人心理学では、客観的な事実よりも客観的事実に対する個人の意味づけを重視します。これを認知論と呼びます。
簡単にいうと、人間は自分が見たい世界を見ているということです。
アドラーは約100年前の心理学者ですが、この認知論は現代の脳科学から見ても正しいと言えます。
現代の脳科学では、人間は生理的なものと考えられてきた視覚でさえ過去の記憶を元に、一部は創造していることが明らかにされています。
アドラーの思想は先駆的であったといえるでしょう。
4. 対人関係論
アドラーの有名な言葉に「すべての悩みは対人関係の悩みである」というものがあります。
個人心理学はその名前から誤解されやすいのですが、対人関係の中での個人を重視します。これを対人関係論と呼びます。
個人心理学では人生には3つの課題が存在すると考えます。それが愛・仕事・交友のタスクです。このように個人心理学では、全ての問題は人間関係の中で生まれると考えます。
5. 共同体感覚
アドラーが共同体感覚を提唱した時、多くの仲間が離れていったとされています。
共同体感覚とは、「人間共同体(人類全体)が私を支えてくれる」「私は人間共同体に貢献ができる」「わたしは人間共同体に属している」という感覚のことです。
個人心理学では神経症者など問題を抱えている人は、この共同体感覚が未発達であると考えます。
そのため、個人心理学でのカウンセリングや教育ではこの共同体感覚を育てることを目指します。
個人心理学のおすすめ本
嫌われる勇気
アドラー心理学の第一人者、岸見一郎の著書。
100万部を超える大ベストセラーになった書籍です。
アドラーの思想が青年と哲人との対話を通して学べます。
アドラーの思想は広く他分野に渡っているため、その思想の概観を掴むのは難しいものです。
しかし、この本では人生に悩む青年に対して、哲人が具体的に回答する内容を通してアドラーの思想を概観できます。アドラー心理学が平易な言葉でわかりやすく解説されています。
初めてアドラーを学ぶ方におすすめです。
幸せになる勇気
『嫌われる勇気』の続編です。『嫌われる勇気』では扱われていなかったライフスタイルについて同じく対談形式を用いて解説されています。
人生で達成すべき愛・仕事・交友のタスクについて詳しく理解することができます。
『嫌われる勇気』を読んでアドラー心理学の基礎を学び、さらにアドラーの思想を詳しく知りたい方におすすめです。
個人心理学講義
アドラー自身の著作であり専門書です。
原文に忠実に訳されており、専門書慣れしていないと難解に感じられる本です。
しかし、アドラー自身の文章を読むことで、彼の思想に直接触れることができます。
この本では共同体感覚についても詳しく取り上げられており、アドラーの晩年の思想を知ることができます。上記2冊を読んだ後、ぜひ読んでみてください。
というわけで、今回は以上です。