心理学の種類は?【心理学は6種類だけ覚えればOKです】

今回の記事では、

・心理学の種類を知りたい。これから心理学を学んでいきたいと思っているけど、種類が多くてどの分野を学んでいけばよいのかわからない。

こういった疑問にお答えします。

この記事を書いている僕は、国立大学院で心理学を専攻しています。
ブログ・Youtube・セミナーなどでの情報発信は3年ほどです。

心理学は6種類だけ覚えればOK


結論をいうと心理学の種類は、以下の6種類を知っていればOKです。

・認知心理学
・学習心理学
・発達心理学
・社会心理学
・産業心理学
・臨床心理学

前提として、心理学は「基礎心理学」と「応用心理学」に分類されます。

「基礎心理学」は基礎研究をベースにした心理学であり、「応用心理学」は基礎心理学で得られた知見を生かした心理学です。

上記の6種類を分類すると下記になります。

・基礎心理学認知心理学・学習心理学・発達心理学・社会心理学
・応用心理学産業心理学・臨床心理学

上記の6種類の心理学は、多くの概論書で主要な心理学として記載されています。
そのため、これらの心理学を知っておけば問題ありません。

ちなみに僕は6種類の心理学を学んだ後、臨床心理学を専攻しました。
僕が臨床心理学を専門にしたのは心理療法を研究したいと考えたからです。

「心理学にはもっと種類があるじゃないか」と思われた方もいるかもしれません。
その通りです。しかし、それらを全て学ぶ必要はありません。

後でお伝えしますが、実際に心理学を学ぶ時には広く浅くではなく専門性が重要になるからです。
そして、どの心理学を専門にするにしても、これら6領域の心理学の知識は基礎として必要になります。

逆にいえば、上記の6種類の心理学を学んでいれば、どの心理学を専門にしても理解しやすくなります。

6種類の心理学を詳しく解説

お伝えしたとおり、心理学は下記の6種類だけ覚えておけばOKです。
それぞれの心理学について解説します。

「自分の興味がある心理学の分野はどれなのか?」と探しながら読んでみると、自分が専門にしたい心理学がどの領域なのか見えてくるでしょう。

・認知心理学
・学習心理学
・発達心理学
・社会心理学
・産業心理学
・臨床心理学

認知心理学

認知心理学は人間を情報処理過程(機械)に見立てて、そのプロセスを研究する心理学です。

認知心理学は心理学的な流れとコンピュータサイエンス系からの流れとの2つがあり、この2つは厳密には異なります。

前者のキーワードは「認知療法」、後者のキーワードは「認知科学」です。※以下、「認知療法的認知心理学」と「認知科学的認知心理学」という2つの用語を使い分けます。

細かい説明をする前にまずざっくりと全体像をお伝えすると、認知心理学は心の中身を研究する心理学です。

この点は「認知療法的認知心理学」「認知科学的認知心理学」共に共通です。
微妙なところなのですが、認知心理学を勉強する人の多くは「認知療法的認知心理学」を学ぶことになると思います。

なぜかというと、カウンセリングでの心理療法がこちらの立場を取るからです。なので、今回は「認知心理学=認知療法的認知心理学」と仮定してお伝えしていきます。

結論をいうと、認知心理学は行動主義へのアンチテーゼとして出てきた心理学です。
行動主義とは「人間の行動を見れば心はわかる」という考え方です。

例えば、目の前で大声を叫びながら周りのものにあたっている人がいたとしましょう。
私たちはこのような人たちを見れば、「怒っているんだな」とわかります。
つまり、行動を見れば心の中を正確に予測することができるわけです。

これを突き詰めたのが行動主義です。
行動主義にとっては行動が全てであり、心の中で何が起きているのかは考えません。
なぜなら、行動を見ればわかるからです。

しかし、「それでは心理学なのに心を無視しているではないか」という批判が出てきます。
「心理学なんだからちゃんと心の中を研究しましょうよ」と言って出てきたのが認知心理学です。

なので、認知心理学が研究するのは「心の中でどのように情報処理がおこなわれているか?」です。

学習心理学

学習心理学は人間や動物が経験を通して行動を変容させていくプロセスを研究する心理学です。
先ほど認知心理学で紹介した行動主義の考え方をベースに研究するのが学習心理学です。

代表的なものとしては「条件付け」があります。

条件付けには「古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)」「道具的条件づけ(オペランと条件づけ)」があり、人や動物がどのように学習していくのかが研究されています。

「古典的条件づけ」で有名なものとしてはパブロフの犬の実験があります。
ロシアの生理学者イワン・パブロフは犬を使って実験を行いました。

犬は餌を提示すると唾液を分泌します。
パブロフは犬に餌を提示すると同時に、ベルの音を鳴らすことを続けました。
すると、やがて犬はベルの音を聞いただけで唾液を分泌するようになりました。

つまり、もともと何の関係もなかった「ベルの音」と「唾液分泌」が結びついたわけです。
これを「古典的条件づけ」と呼びます。

一方、「道具的条件づけ」の代表例はスキナーの研究です。
スキナーはスキナーボックスという箱を使って実験を行いました。

この箱はレバーを引くと餌が出てくるという仕組みの箱です。
スキナーはそこにネズミを入れて実験を行いました。

ネズミはこの箱の中で動きまわります。
そして偶然レバーを押します。すると、餌が出てきます。
この偶然が何度か繰り返されると、やがて自分からレバーを押しにいくようになります。

これを専門的には「強化」と呼びます。ざっくりいうと「餌」というご褒美を手に入れるために、レバーを押すという行動の強化が行われたということです。

このように人間や動物がどのように学習するのかを研究するのが学習心理学です。

発達心理学

発達心理学は生体が年齢とともに心身や行動を変化させていくプロセス(発達)を研究する心理学です。

「発達」と聞くと幼児など子どものことを想像してしまいがちですが、発達心理学では人間は死ぬまで発達を続けると考えます。そのため、例えば、高齢者も発達心理学の対象に含まれます。

発達心理学で有名なテーマとしては発達段階説があります。

ピアジェ、エリクソン、フロイトなど様々な有名な学者が発達段階説を提唱していますが、ここではエリクソンの発達段階説である「ライフサイクル説」を紹介します。

エリクソンのライフサイクル説では、発達段階に応じたそれぞれの課題(専門的には「発達課題」といいます)があると考えます。

ライフサイクル説でエリクソンが想定している課題は以下の表のとおりです。
(表には「活力」という項目がありますが、「発達段階」と「危機」を知っておけば十分です。)

引用元:https://shinri4.com/12-3-erickson/

 

エリクソンのライフサイクル説の中でも有名なのは「青年期」です。
エリクソンは「青年期」を「疾風怒濤の時期」と呼び、様々な困難が押し寄せる時期だとしています。

「青年期」の発達課題は「同一性 vs 同一性拡散」です。
同一性とはアイデンティティのことであり、自分が何者であるかを知るということです。

「青年期」に同一性が獲得されなければ、まさに「疾風怒濤の時期」となり問題が生じます。

このように発達心理学では、年齢に応じた発達のプロセスに関わる内容が研究されています。

社会心理学

社会心理学は、個人に対する社会活動や相互的影響を研究する心理学です。
ざっくりいうと集団としての人間の心を研究しています。

例えば「社会的証明」は、「みんながやっていることは正しい」と自動的に考えてしまう心理のことを指します。

具体的には1人で赤信号を渡らない人も、周りの多くの人が無視して渡っている状況では信号を無視して渡りやすくなります。

他にも「社会的手抜き」は、人数が増えるに従って一人当たりの課題遂行量が減る現象を指します。

要するに課題を行っている時、周りの人数が増えれば増えるほど「誰かがやってくれるだろう」と考えて手抜きしてしまう心理です。

具体的には、綱引きをしている時に周りが頑張ってくれてるから「自分はやらなくても大丈夫だろう」などと考えてしまうのも「社会的手抜き」の一種です。

このように集団が個人に与える影響、また逆に個人が集団に与える影響などを研究するのが社会心理学です。

産業心理学

産業心理学は労働環境や作業効率、組織内の人間関係などを扱う心理学です。

有名なものとしてはテイラーの「科学的管理法」とメイヨーの「ホーソン研究」が挙げられます。

テイラーは劣悪な環境で働く労働者の作業量・作業方法を研究しました。

その調査から作業条件・作業量・賃金率などを一律に設定するシステムを考案しました。
これを科学的管理法と呼びます。

一方、メイヨーは労働者たちのインフォーマルな人間関係が作業のやる気を高め、生産率に影響を与えることを明らかにしました。

この研究はアメリカのホーソン工場で行われたため、「ホーソン研究」と呼ばれます。

このように産業心理学では、産業面での労働環境・作業効率・人間関係などを幅広く扱います。

臨床心理学

臨床心理学は心理学の知見を応用し、心理的問題・行動的問題の援助などを行う心理学です。
臨床心理学には主に下記に焦点を当てます。

・研究
・予防
・査定
・援助

イメージしやすいのは「援助」ですね。
いわゆるカウンセリングはこの「援助」にあたります。

カウンセリングを行い、クライエントの心の問題を解決していくのは臨床心理学の役割です。
病院で働く心理士や学校で働くスクールカウンセラーなどが専門にしているのも臨床心理学です。

カウンセリングで重要になるのがアセスメントと心理療法です。

アセスメントとは発達検査や知能検査などを行いクライエントの状態を正確な見立てるために行います。そして、このアセスメントに従い心理療法を行ないます。

現在、心理療法は400種類以上あると言われていますが、主に3大学派と呼ばれる学派の心理療法が行われています。3大学派とは以下の3つの学派です。

・精神力動系=心の中で働く精神的な作用を扱う学派
・人間性心理学=人間の肯定的な側面を扱う学派
・認知行動系=客観的に観察ができる行動を通して心を扱う学派

以上、それぞれの心理学の紹介でした。

1つの分野を専門的に極める

さて、ここまで6つの心理学を紹介してきました。
6つの心理学を学んだら、次に自分の専門となる心理学を1つ選択しましょう。

もちろん、心理学を専門にした時点で6つの領域すべてが自分の専門になるわけですが、その中からさらに専門をつくるのです。専門の中の専門というイメージですね。

なぜ1つに絞るのか?
それは心理学を学ぶ上で重要なのは専門性だからです。

例えば、心理学の最難関資格と言われる臨床心理士であれば、これら6つの心理学を学んだあとに専門分野として臨床心理学を選択します。

臨床心理学の一般知識を持っていたとしても、実際にカウンセリングを行うためにはさらに高い専門性が求められます。だから、カウンセラーになりたい人は臨床心理学に焦点を絞り、それを極めていくのです。

これは他の領域の心理学も同じです。

「自分はどの心理学に興味があるのか?」「今後、どの心理学を極めていきたいのか?」
専門を1つに絞りましょう。そしてその心理学をどんどん勉強していく。

心理学の種類を理解しているメリットはここにあります。
自分がどの心理学を専門にしたいか検討して選択できる点です。

ちなみにこれは経験則ですが、専門を選ぶ際の基準は「自分がワクワクするか?」決めると成功しやすいです。

その分野を勉強しているだけでワクワクする。
はっきりいってこれが無敵です。

苦行で勉強している人と、やりたくてたまらなくて勉強しているという人では圧倒的な差が出ます。
好きこそ物の上手なれ。

参考までに。

心理学のおすすめ概論書↓

心理学の全体像をつかむ上で役に立つのが概論書です。概論書は心理学全体が見渡せるように構成されています。

心理学の概論書は数多く出版されていますが、おすすめは有斐閣のリベラルアーツシリーズです。

認知心理学・臨床心理学・発達心理学・社会心理学という、現代心理学の中心を担う4つの分野を軸に、心理学全体が概観されています。

大学生向けに書かれているということもあり、専門性がありながら初学者にも読みやすい本です。はじめて本格的に心理学を学ぶ人におすすめです。

というわけで、今回は以上です。

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