心理学とは何か知りたい人
[word_balloon id=”2″ position=”L” size=”M” balloon=”talk” name_position=”under_avatar” radius=”true” avatar_border=”false” avatar_shadow=”false” balloon_shadow=”true”]・心理学って何?・心理学の成り立ちは?
・心理学で人の心読めるの?[/word_balloon]
こういった疑問にお答えします。
この記事を書いている僕は、国立大学院で心理学を専攻しています。
ブログ・Youtube・セミナーなど、心理学の情報発信歴は3年ほどです。
心理学とは?
「心理学」という言葉を聞くと皆さんはどんなイメージを持っているでしょうか?
・一目見ただけで相手の心を読める
・心理テストで性格がわかる
・占いに似ている
・他人を思い通りに操るもの
・ちょっと怪しい学問
もしこんな風に思っているならば誤解です。
心理学は心と行動の科学であり、数学などと同じくきちんとした学問の1つです。
「え、心の科学なのに行動?」と思われた方は鋭い感性をお持ちです。
心理学では行動も含めます。
なぜでしょうか?
すべての行動は心(脳)によってもたらされるという信念が根底にあるからです。
この信念は心理学以前の神経科学という学問からもたらされたものです。
結論、心理学は心と行動の科学です。
心理学は英語で何という?
心理学は英語で “psychology” (サイコロジー)です。
・サイコ=心
・ロジー=科学、法則、学問
という意味です。
もう少し詳しく言うと、心理学の本当の語源は古代ギリシャ語の「プシューコロギア(psychologia)」です。
・プシュケー=心、魂
・ロギア=研究、説明
なぜ古代ギリシャ語が語源なのかというと、心理学のルーツは哲学だからです。
哲学は古代ギリシャを中心に発展してきました。
そのため、古代ギリシャ語が語源になっているのです。
心理学の成り立ち
心理学の起源
心理学は1879年ヴントがドイツのライプチヒ大学に、実験心理学研究所を創設したことに始まります。
そのため、ヴントは「実験心理学の父」と呼ばれます。
先ほど、心理学のルーツは哲学にあるという話をしましたが、ヴントの功績はこの哲学から心理学を独立させたことにあります。ちなみにヴントが心理学を創設する背景には、デカルトなどの哲学的流れの他、フェヒナーなどの精神物理学的流れも存在しました。
ヴント以前の心理学はいわば哲学の一部であり、心理学は科学ではありませんでした。
哲学に内包された心理学では、科学に求められる客観性の担保ができないという問題がありました。
そこで、ヴントは心理学を哲学から独立させて、客観的に心を研究する基礎を整えたのです。
基礎心理学書のはじめの章に必ずといっていいほどヴントの話が紹介されるのは、こういった理由からです。
ヴントは内観法を用いて心的要素の目録を作ろうとしました。
内観法は研究者が個室に篭り、心に思い浮かんだものを報告するという方法論でした。
ちなみにこの心に思い浮かんだものとは、感覚と感情に限られていました。
ヴントは要素を重視したため、彼の心理学は要素主義と呼ばれます。これが心理学の起源です。
心理学の発展
しかし、ヴントの方法は主観的であり、客観性を欠くと批判され、要素の集合はその総和以上のものとなる(創造的綜合の原理)をベースにしたゲシュタルト心理学、客観的に観察可能な行動を見ることで心を研究しようとする行動主義の発展とともに反比例する形で衰退していきます。
心理学はこのような成り立ちを経て、さらに行動主義を批判する形で認知心理学が誕生して現在に至ります。
ざっくり説明すると、要素主義は先ほどお伝えした通り客観性を欠いています。
なぜかというと、被験者は主観的な報告をしているだけだからです。
その人はそう思ったというだけです。
一方、行動主義は人間の行動から心を推測します。
例えば、ある人が怒鳴りながら暴れていたら、誰が見てもその人は怒っているとわかるわけです。
つまり、行動主義には誰が見てもわかるという客観性があります。
ですが、やはりこの行動主義に対しても批判が出ます。
それは「心を科学する学問が心理学なのに、行動ばかり見ているのでは人の心を研究していない」という批判です。
そこで、やはりしっかりと心の中を研究しようという学派が出てきます。
これが認知主義です。
認知主義は心の内面の動きを科学的に研究する学問です。
参考までに認知主義が想定している心の中身のモデルの1例を紹介します。
以下の画像は認知主義をベースに開発された認知療法の創始者ベックのモデルです。
過去の体験からスキーマと呼ばれる信念体系ができあがり、そこから自動的に浮かんでくる思考がうつ病などの原因となっているという考え方です。
要するに認知主義では、心の中身を扱うという話です。
認知療法ではこの自動思考やスキーマに働きかけることでうつ病などの精神疾患を治療しようとします。
とにかく心理学は、
・哲学的・精神物理学的流れ→要素主義→行動主義→認知主義
という流れを押さえておけばかなり理解しやすくなります。
※厳密に言うと、「認知心理学」とベックが創始した「認知療法がベースとした認知療法的な認知心理学」は別物ですが、ここではとりあえずどちらも心の中身を研究する認知主義学派と考えてください。
心理学は基礎心理学と応用心理学に分かれる
心理学の成り立ちと流れをざっくり紹介しましたが、心理学には以下のような種類があります。
※表は代表的なものであり、実際にはもっと幅広い心理学が存在します。(Ex. 教育心理学・健康心理学・宗教心理学など)
心理学には大きく分けると基礎心理学と応用心理学があります。
基礎心理学はその名の通り基礎研究を基盤とした心理学であり、その心理学を実社会で生かそうとするのが応用心理学です。
上記の画像でいうと、それぞれ以下のように分類されます。
・「認知心理学・学習心理学・発達心理学・社会心理学」→基礎心理学
・「産業心理学・臨床心理学」→応用心理学
一口に心理学といってもこれだけの種類が存在するので、自分に合った心理学を選択して学んでみてください。
心理学のおすすめ本は下記の記事にまとめています↓
心理学で人の心は読めるか?
ここまで読まれた方は「心理学って思ったより固い!」と思われたことでしょう。
書店の心理学コーナーに行くと「他人を操る〇〇心理学!」みたいな本が大量にありますが、あれらは全部心理学ではありません。「心理的読み物」とでも言うべきものです。
最初にお伝えした通り心理学は心と行動の科学であり、数学などと同じくきちんとした学問の1つです。
そのため、心理学はやはりアカデミックなものであり、多くの人が思っているようなライトなものではありません。
一般の人に「心理学を学んでいる」と言うと必ず尋ねられるのが「心を読めるんですか?」という質問です。
結論を言うと、心理学を学んでいる人でも人の心を読むことはできません。
「心を読む」という言葉から一番に思いつくのは「嘘を見抜く」ことですが、これは不可能であることが明らかにされています。嘘を見抜く確率を上げることはできますが、ピノキオの鼻のように嘘を示す明確な指標は見つかっていません。
最も信頼できる指標としては瞳孔があり、約70%程度の確率で虚偽を検出することができると言われています。
瞳孔に関しては瞳孔計測学という分野があり、瞳孔から消費者の購買意欲を推測する研究などが知られています。
虚偽検出について、詳しくは下記の本を参照してください。
これまでの研究が見事にまとまっています。
この本を読むと、残念ながら心理学を学んでも人の心が読めないことがよくわかります。
もちろん、今後、心理学の研究が進めばいずれ人の心を読むことができる日がくるかもしれませんが。
というわけで、今回は以上です。