脳の3%神話

脳は3%しか使われていない。

あなたもこんな言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?

脳科学という学問はヒトゲノム解析の完了後、脳の解明に着手したにも関わらず解明に至らなかったことにより継続している学問です。

結論から言うと、脳は数%しか使われていないというのは嘘です。
残念ながら脳をfMRIなどの画像診断を利用して確認すると、ほぼフル稼働していることが明らかになっています。

例えば、ボーッとしている時ですら私たちの脳は活動していることがわかっていますし(DMN)、眠っている時も脳は活動しています。

脳は比較的バランスよく常時フル稼働しています。

全脳可動。
これが現代科学が明らかにした事実の1つです。

fMRI (factional magnetic resonance imaging)

fMRIとは、脳の血流活動を視覚化することができる画像診断機です。

MRIなどの画像診断機は脳内を詳細に確認することができる機械ではありますが、リアルタイムでの脳の動きを捉えることはできませんでした。

fMRIを利用すればリアルタイムで脳の活動を動画的に確認することが可能です。
簡単に説明しましょう。

脳の活動部位には血流が集まるため、その血流が集まった部位を視覚化すればリアルタイムで脳のどの部位に血流が集まっているかがわかります。

fMRIは脳の血流がどこに集まっているのかを視覚化する技術です。
下記の画像では視覚野周辺が発火(活動)していることが見て取れます。

(https://ja.wikipedia.org/wiki/FMRIより引用)

fMRIの強みはリアルタイム性です。
fMRIの開発に伴い、研究者たちはリアルタイムで脳の各部位の活動を把握することが可能となりました。

脳機能全体論

fMRIなどの画像技術の進歩により、脳研究は一気に進みました。

かつて脳研究は「脳機能全体論」に支配されていました。
1820年代にフランスの生理学者Jean Pierre Flourensが脳機能全体論を提唱しました。

これは脳の特定の領域が特定の活動を担うのではなく、脳の全体量が大切だという論です。

例えば、何らかの原因により脳の体積が減少するとそれに伴い、知覚・運動・思考・記憶などの能力が低下すると考えられていました。つまり、体積が大切なのであり、どの部位も私たちの全ての活動に平等に関与していると考えられていました。

このような考え方は脳を解剖学的なものとされるのを嫌がる宗教家や権力者にとって都合よく、喜んで社会的に受け入れられました。脳という神聖なものが科学で検証できるはずはないという考え方です。

古くはデカルトも心身二元論の中で心と身体は別物であることを唱え、脳は心というスピリチュアルなものが身体と交流するために存在すると考えていました。

脳機能局在論

脳機能全体論は19世紀半ばになると痛烈な批判にさらされます。

フランスの神経学者Broca(ブローカー)、ドイツの神経学者Wernicke(ウェルニッケ)、イギリスの神経学者Jacksonらによって鋭く批判されます。

例えば、Jacksonは焦点性てんかんの研究で、様々な運動機能と感覚機能は大脳皮質まで逆向きに辿れることを示しました。
つまり、特定の領域が特定の機能を持っていることを臨床的に明らかにしたのです。

その後、皮質領域の研究はCajalらにより細胞レベルまで落とし込まれました(後のコネクショニズム)。
脳機能局在論の証明は「人間がどのように言葉を生み出すのか?」という言語領域の研究によって行われます。

コネクショニズムの研究は現代神経科学の基盤となるものです。

局在的かつバランスよく

現代の脳研究が明らかにしたことの1つは脳機能局在論で説明した通りです。
特定の領域が特定の機能を担っていることです。

そして、特定の領域どうしが連携して私たちの脳はバランスよく全体的に稼働しています。

これは脳機能全体論者が主張するような全体性とは異なります。
脳機能全体論者は局在性を認めていませんでしたから。

脳研究の結果見えてきたことは、特定の領域が特定の機能を持つという脳の局在性とその局在化した各部位どうしが連携して全体としてバランスをとっているということです。

つまり、脳は局在化しつつも全体稼働をしているということです。

最後のフロンティア

脳研究は人類最後のフロンティアだと言われています。

そのため、ここまで説明してきたことは現段階での脳研究から言えることに過ぎません。
100年経てば違う主張がなされているのかもしれません。

いずれにせよ日々行われている脳研究の成果を待つしかありません。

脳の解明にはまだまだ時間がかかりそうですが、フロンティアに切り込みひとつひとつの発見を楽しみに待つことができる私たちは幸せな時代に生まれたのではないでしょうか?

気長に楽しく研究を待ちましょう。

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