神経科学という分野があります。
脳科学という方が一般には通っているでしょう。
僕は心理学を専門にしていますが、近接領域として最も重要だと感じているのがこの神経科学です。
心理学とはその名の通り人の心について研究する学問ですが、人の心は脳から生み出されます。
そのため、心を専門にする人間が神経科学を学んでおくことはかなり重要だと考えています。
ただ神経科学という学問は脳という解明されていない領域に踏み込む学問であり、はっきりいうと難解です。
実際、この分野のスタンダード本として最も有名な『カンデル神経科学』(E. R. Kandel, 2016)は、1600ページを超えます
その内容をブログで全てまとめるのは難しいので、この記事では「神経科学の前提」に焦点を絞ってお伝えしたいと思います。
神経科学とは?
まず神経科学とは何なのか?先ほどの『カンデル神経科学』より引用します。
神経科学が最終的に目指すところは、神経回路を介した電気信号の流れがどのように行動、すなわち知覚、運動、思考、記憶を生じさせるかを理解することである(Eric R.Kandel, et al. 2016)。
要するに脳機能がどのように行動や心に関連しているかを解き明かすことを目的としているわけですね。
脳機能を解き明かすこと。
それが神経科学の最大の目的です。
脳機能を解き明かすこと。
それが神経科学の最大の目的です。
脳研究は人類最後のフロンティアです。
個人的には神経科学書を読んで、最新の研究に触れる度に興奮が収まりません。
人類最後の解明に立ち会っているかのような臨場感があります。
個人的には神経科学書を読んで、最新の研究に触れる度に興奮が収まりません。
人類最後の解明に立ち会っているかのような臨場感があります。
神経科学の前提
「全ての心の作用は脳機能によってもたらされる」
これが神経科学の前提です。
脳機能の働きが「心」を生み出す。
あらゆる心的現象は脳機能が基盤になっていると考えるのが神経科学者です。
このような神経科学の前提に違和感を覚える方もいるのではないでしょうか?
「心は脳ではない。」
そのような主張もあると思います。
そして、それは本質的には間違いではないと思います。
しかし、神経科学という学問は「脳機能=心」という立場に立つのです。
学問は何らかの立場に立ちますからこれは仕方ないことです。
これが神経科学の前提です。
脳機能の働きが「心」を生み出す。
あらゆる心的現象は脳機能が基盤になっていると考えるのが神経科学者です。
このような神経科学の前提に違和感を覚える方もいるのではないでしょうか?
「心は脳ではない。」
そのような主張もあると思います。
そして、それは本質的には間違いではないと思います。
しかし、神経科学という学問は「脳機能=心」という立場に立つのです。
学問は何らかの立場に立ちますからこれは仕方ないことです。
あらゆる心的現象や行動が脳機能によって生じるという神経科学の立場は、揺るぎない強固なものです。
例えば、『カンデル神経科学』では次のように記述されています。
例えば、『カンデル神経科学』では次のように記述されています。
「歩行・食事といった単純な行動も会話・芸術活動など、複雑な認知行動も脳が基盤である。」「情動障害・認知障害といった精神疾患は全て脳機能の異常に由来するものである。」(Eric R.Kandel, et al. 2016)
これらの記載から神経科学者が「あらゆる現象の基盤には脳機能がある」と考えていることがわかります。
神経科学成立の背景
神経科学はどのように成立したのでしょうか?
現代の神経科学の見解は、解剖学、発生学、生理学、病理学、心理学の統合を経て20世紀に誕生しました。
解剖学的背景
今回は「解剖学」を取り上げます。
神経科学を成立させた解剖学的背景を考えるためには、時を随分巻き戻す必要があります。
紀元前2世紀まで遡ります。
まずはGalen(ガレノス)による神経発見です。
Galenは脳と脊髄から分泌される流体を抹消へ送る管が神経であると考えました。
この時、神経が初めて発見されました。
しかし、それ以後は19世紀になるまで特段研究の進歩はありませんでした。
研究が進歩したのは顕微鏡の発明以後です。
顕微鏡が発明されるまで直接神経を確認する術がなかったからです。
憶測の域を出なかったわけですね。
顕微鏡の発明により、神経研究は発展を見せます。
Galenの神経発見からかなりの時を経た19世紀終盤、イタリアのGolgi、スペインのCajalの2人の研究者により神経細胞の詳細な構造が記述されます。ここからようやく神経科学が専門分野として確立され始めます。
1人目のGolgiは銀塩を用いた神経細胞の染色方法を開発し、その全体構造を顕微鏡下で明らかにしました。
典型的な神経細胞は細胞体と枝分かれした樹状突起とケーブル状に長くのびた軸索の2種類の突起を持つことが明らかにされました。
2人目のCajalはゴルジの手法を用いて、神経組織は連続した網状の融合細胞ではなく、独立した細胞同士のネットワークであることを発見しました。
Cajalは個々の神経細胞(ニューロン)が神経系の基本的な構成単位となってシグナルを伝達するというニューロン説を唱えました。
私たちがよく聞く「ニューロン」は、Cajalによって明らかにされたのです。
そして心理学の教科書に記載されているような「ニューロン説」もまたこの時に提唱されました。
その後も次々と研究は進みます。
Harisson は1920年代にニューロン説を裏付ける事実を発見しました。
その事実とは樹状突起と軸索が細胞体から成長し、個々の神経細胞を単独で培養した場合にもそうであるということです。
また、1950年代半ばの電子顕微鏡の導入でCajalのニューロン説が最終的に確定します。
これに伴いシナプスの存在も明確に確認されることとなりました。
今回は解剖学的背景を取り上げましたが、「発生学、生理学、病理学、心理学」的背景もそれぞれ同様に存在し、それらが統合されることで現代神経科学が成立しています。
このように多数の学問的背景をもとに成立したのが、神経科学です。
今回の記事では「神経科学が前提とすること」「神経科学の成立背景」について、ほんの触りだけお伝えしました。
脳機能を解き明かす神経科学は、心理学をはじめあらゆる分野の人たちに役立つことです。
この記事で興味を持たれた方はぜひ勉強してみてください。
神経科学の面白さにあっという間に魅了されることでしょう。
Galenの神経発見からかなりの時を経た19世紀終盤、イタリアのGolgi、スペインのCajalの2人の研究者により神経細胞の詳細な構造が記述されます。ここからようやく神経科学が専門分野として確立され始めます。
1人目のGolgiは銀塩を用いた神経細胞の染色方法を開発し、その全体構造を顕微鏡下で明らかにしました。
典型的な神経細胞は細胞体と枝分かれした樹状突起とケーブル状に長くのびた軸索の2種類の突起を持つことが明らかにされました。
2人目のCajalはゴルジの手法を用いて、神経組織は連続した網状の融合細胞ではなく、独立した細胞同士のネットワークであることを発見しました。
Cajalは個々の神経細胞(ニューロン)が神経系の基本的な構成単位となってシグナルを伝達するというニューロン説を唱えました。
私たちがよく聞く「ニューロン」は、Cajalによって明らかにされたのです。
そして心理学の教科書に記載されているような「ニューロン説」もまたこの時に提唱されました。
その後も次々と研究は進みます。
Harisson は1920年代にニューロン説を裏付ける事実を発見しました。
その事実とは樹状突起と軸索が細胞体から成長し、個々の神経細胞を単独で培養した場合にもそうであるということです。
また、1950年代半ばの電子顕微鏡の導入でCajalのニューロン説が最終的に確定します。
これに伴いシナプスの存在も明確に確認されることとなりました。
今回は解剖学的背景を取り上げましたが、「発生学、生理学、病理学、心理学」的背景もそれぞれ同様に存在し、それらが統合されることで現代神経科学が成立しています。
このように多数の学問的背景をもとに成立したのが、神経科学です。
今回の記事では「神経科学が前提とすること」「神経科学の成立背景」について、ほんの触りだけお伝えしました。
脳機能を解き明かす神経科学は、心理学をはじめあらゆる分野の人たちに役立つことです。
この記事で興味を持たれた方はぜひ勉強してみてください。
神経科学の面白さにあっという間に魅了されることでしょう。
<引用・参考文献>
Eric R.Kandel, et al. (2016). カンデル神経科学 メディカル・サイエンス・インターナショナル
Neil R. Carlson(2013). カールソン神経科学 丸善出版
Neil R. Carlson(2013). カールソン神経科学 丸善出版