脳の可塑性

可塑性という用語があります。

これは「変化しうる」という意味で、英語ではプラスティックです。

近年、脳の可塑性に注目が集まっています。

以前は脳細胞は一度失われると二度と復活しないと考えられていました。
また、脳回路の配線はあらかじめ決まっており、繋ぎ直されることなどないと考えられていました。

しかし、最近の研究で失われた脳細胞が復活したり(正確には新生)、配線が繋ぎ直されたりすることが明らかになってきました。

この衝撃の事実はビジネスの場などで急速に広まりました。

脳の可塑性に対する誤解

研究が世に広まることは好ましいことである一方、「可塑性」という言葉だけが独り歩きして、「脳はいくらでも変えられる」と極端なことを言う人たちが出てきました。

個人的な印象では、コーチングビジネスや自称カウンセラーのような人たちが、このようなことを主張している印象があります。

脳は確かに可塑性を持っていますが、この可塑性は脳細胞全てに適応されるわけではありません。

可塑性のない領域の代表例としては視覚野が挙げられます。

視力を失った後、いくら訓練しても基本的には視力は回復しません。
他にも可塑性の論理が通じない脳の領域はあります。

また、睡眠不足で失った脳細胞なども基本的には不可逆性を持っており、復活することはありません。
つまり、睡眠不足で一度失われた脳細胞は戻ることはありません。

万能説は怪しい

何が言いたいかというと、可塑性は万能ではないということです。

「このプログラムを買えば脳が変化して〇〇になれます」みたいに、脳の可塑性をまるで万能薬のごとく謳っている人がいたら怪しいと思って間違いありません。

しっかりと経歴を調べましょう。

医学・心理学などをきちんと修めている人物なのか?
慎重に考える必要があるでしょう。

脳の可塑性は万能ではありません。

このことを頭に置いた上で、脳にまつわる発言をしている人を見れば自ずと誰が正しいことを言っていて、誰が怪しいのかもよくわかるはずです。

せっかく学ぶのです。
正確な情報を学び取りましょう。

それでも可塑性はすごい

とはいえ、可塑性の研究は私たちに希望を与えてくれるものです。

特にネガティブ思考にまつわる脳の領域に可塑性が見られるのはとても希望の持てる発見です。

ネガティブを生み出す脳の領域は訓練次第で変化します。

訓練の一つとして、ポジティブ心理学で発見された知見を紹介しましょう。
それは注意をポジティブなものに向けるというものです。

脳科学の研究において、ネガティブな人は「病気」「元気」「苦しい」「楽しい」などの単語が並んでいた時、「病気」「苦しい」など負の単語に注意が向きやすいことが知られています。

ネガティブなものに目が行きやすいことが、ネガティブな人の思考回路の特徴だということです。
これは当たり前のように思えますが、重要な発見です。

その後の研究で、ネガティブな人がポジティブなものに意識を向けるよう訓練したら、ネガティブ思考が軽減されることが示されました。
また、驚くことにネガティブ感情にまつわる神経回路そのものの「結びつきの強度」も減少していました。

つまり、訓練次第である程度ネガティブ思考は克服できます。
さらにその変化は神経回路という物理レベルで行われるのです。

これはネガティブ思考に悩む全ての人にとっての希望でしょう。

ですが、だからこそインチキ脳科学者に騙される人もいます。
どこまでが事実でどこからが嘘なのか?

情報を正確に見分ける力を身につければ、脳の可塑性はあなたの大きな味方になってくれることでしょう。

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