【災害支援の心理学】ディブリーフィングの危険性

ディブリーフィング

あなたはディブリーフィングという用語を聞いたことがあるでしょうか?
ディブリーフィングは災害など負のイベントが生じた直後にその体験を詳細に語らせるという方法です。

ディブリーフィングは災害などのイベントが起きた際、トラウマ化を防ぐための方法として開発されました。
かつては防災支援の中心を成す心理支援でした。

実際、アメリカの9.11テロや東日本大震災の際に、中心的な支援法として精神科医や心理士たちによって行われていました。

しかし、近年、被災直後に内容を語るという行為は支援に役立つどころか、状況をさらに悪化させることが明らかになってきました。
被災直後に起きた事実を被災者に語らせるというディブリーフィングはトラウマを悪化させるのです。

ASDとPTSD

防災心理学の観点から押さえておかなければならないことがあります。

それがASD(急性ストレス障害)とPTSD(心的外傷後ストレス障害)の2つです。

震災等の大きな負のイベントが起きた直後1ヶ月は 、誰でもパニックやフラッシュバック、鬱症状などPTSDと同じ症状が出てきます。

ASDは災害という生命に関わる危機が普段とは異なる大きなストレスを受けたために起こる当然の反応です。

ですから、災害発生後1ヶ月程度このような症状が生じるのは自然現象です。

しかし、1ヶ月を超えてもフラッシュバックやパニックが治らないということであれば、PTSDの疑いがあります。

そのため、支援者は医療機関に繋がなければなりません。

被災者支援は現実的に行う

現在、推奨されている被災者支援は、現実的な支援です。

心理士であってもこれは変わりません。
ディブリーフィングができない以上、支援者が被災直後の支援でできることは現実的な支援です。

現実的な支援とは飲み水や食料の確保、救援物資を届ける、瓦礫の撤去作業、田畑の再構築などのことです。

つまり、一般人でもできることです。

心理士にできること

では、心理士が一般人以上にできることはないのでしょうか?

もちろんあります。

ディブリーフィングの反論研究から、被災者に無理に起こった出来事を語らせることは逆効果であることがわかりました。

しかし、同時に被災者が語りたいタイミングで語ることには効果があることも示されています。

被災者が直後に語りたければ語ってもらっても良いですし、後になって語りたければ後から語ってもらっても構いません。

重要なのは「被災者が語りたいタイミングかどうか?」という点です。

臨床心理士等の心の専門家にできることは、被災者が語りたいタイミングで語ったことを傾聴することです。

被災者の心のケア

被災者の心のケアは身体から行う方が良いです。
具体的には筋弛緩法や呼吸法などです。

被災直後は交感神経が優位になっており、身体中の筋肉が硬直状態になっています。

心と身体は繋がっていますから、身体を緩めることで心も緩まります。

また、身体からのアプローチは子どもも行いやすいため、支援者は支援の方法として知っておくべきでしょう。

筋弛緩法

5秒程度両手をそらし(指を天井に向けるように)力を入れます。

その後、脱力します。

同じく5秒程度両足をそらし(指を天井に向けるように)力を入れます。

その後、脱力します。

次に両肩を持ち上げ力を入れます。5秒程度経ったら脱力します。

このサイクルを3〜5回繰り返し、身体を緩めましょう。

支援者が被災者に行う場合、低めの声で筋弛緩を誘導してあげましょう。

<スクリプト>

「両手をそらし力を入れます」

「ぐーっと力を入れてください」

「では、すーっと力を抜いて、手先が温かい感覚を味わってください」

※足の筋弛緩も同様に進めてください

ブリージング(呼吸法)

鼻から息を吸い、口をすぼめて10秒間細く長い息を吐き出します。

このブリージングはロシア軍が実際にパニックを防ぐために行っている方法です。

ポイントは息を吸うときに身体を緊張させ、1秒程度止めてから一気に口から吐き出すことです。

口から息を吐くときには身体が緩んでいくイメージをしましょう。

全身の筋肉が緩んでいく感覚を味わってみましょう。

実践で支援できるように

筋弛緩法にしてもブリージングにしても、簡単なようで実際にやってみないと感覚を掴むことはできません。

支援者がやり方を知らなければ現場では何の役にも立ちません。

ですから、いざという時に支援ができるように、実際に自分で行っておいてください。

こうすることで、いつでも人に教えられる状態になります。

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