錯覚の実験

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンは著書『ファスト&スロー』の中で人間の錯覚に関する研究を紹介しています。

被験者はバスケットボールの試合を見せられ白チームのパスの回数を数えるように言われます。
あなたもやってみてください。

白チームのパスの回数が何回か数えて、最終的な回数を答えてください。
数え間違えないようにしっかり集中してくださいね。

いかがだったでしょうか?
正確に数えられましたか?

実はこの実験では、ゴリラが真ん中に現れます。
そして、そのことに多くの人が気づかないことが示されています。

あなたはゴリラが真ん中を通ったことに気づいたでしょうか?
気づかなかった人はもう一度数を数えずに見返してみてください。

このような錯覚が生じた原因は人間のシステムにあります。
カーネマンは人間の処理システムをシステム1とシステム2に分けました。

システム1は注意しなくても認識する速いシステムのことで、色などがそうです。

目の前に信号機があれば、何も考えなくても青色だ黄色だ赤色だど認識できます。
自然に目に入り、認識もされる。それがシステム1の機能です。

キーワードは直感だと言えるでしょう。

一方、システム2とは注意を要する処理のことです。

先ほどのゴリラの動画がまさにそうです。

白チームのパス回数を数えるためには注意的な努力が必要です。

キーワードは論理です。

 

ミスディレクション

カーネマンに関連した行動経済学の話はまたお伝えしようと思いますので、このあたりで割愛します。

この実験を通して僕が伝えたいことは人間は注意が向くとその他のことが見えないということです。

マジシャンのテクニックにミスディレクションという技法があります。

ミスディレクションとは簡単にいうと、ある特定のものに客の注意を向けさせ、その間に思い通りのことを行うという技法です。

例えば、左手で客の肩を触り、話しかけながら右手で客のポケットにカードを入れるということが行われます。

客は左手で肩を触られ話しかけられているという状況に意識が向いていて、マジシャンの右手の動きに気づかないのです。

詐欺師のスリでもミスディレクションがよく使われています。

詐欺師はカモを見つけるとぶつかります。
そのぶつかった衝撃に相手が驚いている間にポケットから財布をスルのです。

これも人間が一つのことにしか注意を向けられないという性質を悪用したテクニックです。

このように注意が向いている間、その他のものへの意識が無防備になるという性質が人の心にはあります。

ゴリラの実験でもわかる通り、人は注意を向けたものしか見えない性質を持っているのです。

言い換えれば、ある特定のことに意識を向けるとそのことばかり思い浮かんでしまうということです。

 

嫌な人のことばかり思い浮かぶ原因

もうお分かりだと思いますが、嫌な人が思い浮かぶことに悩んでいる人はこの「注意を向けたものしか見えない」という心の性質にどっぷりハマってしまっているのです。

だから、嫌な人のことばかりが思い浮かびます。

嫌な人に焦点を当て、常に頭の中で注意を向けているので、他のことに手がつかないという現象が起きます。

ぐるぐる嫌な人が頭の中で回って苦しむのです。

注意が「嫌な人」にセッティングされているため、思いっきり嫌な人の重要度が高まっているというわけです。

これを解決する方法は一つ。

注意を嫌な人から逸らし、自分の中での重要性を下げるしかありません。

 

重要性を下げる

まず、あなたにとって最も重要性が高いものを一つ選んでください。

それは自分の目標を達成することかもしれませんし、勉強かもしれませんし、仕事かもしれません。

僕は元会社員であったこともあり、よく会社員の方から相談を受けます。

相談される内容はやはり人間関係の悩みが多いのですが、その時必ずアドバイスするのがタスクに集中しましょうということです。

職場で人間関係に悩まれている方はどうも人間関係に意識がいきすぎていて、本来会社でなすべき仕事がおろそかになっています。

逆に人間関係の悩みが少なく、仕事ができる人はあくまでタスクに意識がいっています。

ですので、「自分が今、集中してやるべき重要なことは何か?」を再確認してください。

そう考えれば、「嫌な人のことを考える」ということは全く重要ではなく、むしろ考えても何の利益もないことだと気づくでしょう。

ただ、そうはいっても思い浮かぶのはしょうがないことです。

嫌な人が思い浮かんだときは、「自分の中で今、重要なものは何か?」と問いかけて注意の向かう方向を変えてください。

このように注意を意識的に向け直すことで神経回路がつなぎ変わることは脳科学の研究でもわかっていますので、ぜひ何度もチャレンジしてみてください。

努力はあなたの神経回路が答えてくれます。

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