アイゼンク・バーギン論争

1952年、心理学界に衝撃の論文が提出されました。

論文の著者はアイゼンクという人物で、アイゼンクは次のような主張を行いました。

・神経症の自然治癒率は70%である(7割の人間は神経症が自然に治る)
・文献調査をすると精神分析治療によって良くなった人は45%、その他の心理療法では64%である
・自然治癒率70%と比べて、精神分析治療45%とその他心理療法64%は低い、どころか心理療法はマイナスになる

アイゼンクの主張は「心理療法は逆効果である」というものでした。

その後、アイゼンクの主張に対してバーギンという人物が反論しました。

・アイゼンクの自然治癒力のデータは誤りであり、神経症の自然治癒率は30%である
・精神分析・心理療法の改善率は60%である
・精神分析・心理療法の改善率は60%であるから心理療法には明らかに効果がある

バーギンの主張は「心理療法には効果がある」というものでした。

この論争は同じ文献調査したにも関わらず、結果が大きく異なっていました。
いずれにせよ研究者の立場や考え方によってデータが変わってしまうのは問題です。

アイゼンク・バーギン論争は「目に見えない心理療法を科学的に測定できないのか?」そんな動きを心理学界に広めるきっかけとなりました。

そして、1990年代から心理療法を科学的に測定する多くの手法が誕生することになります。

 

4つの効果研究の方法論

治療効果を科学的に表すために4つの方法論が工夫されました。

 

①DSM・ICDなどの基準を用いる

DSM・ICDは精神医学的な診断基準です。

医師はこの診断基準をもとに病気を判断しています。

現在は心理療法もこの診断に基づいて効果研究が行われています。

 

②診断面接基準・症状評価尺度・症状評価質問紙を用いる

研究によって作成された尺度などを利用して客観的に心理療法の効果を測定します。

合計何点以上だとうつ病の疑いがあります、みたいなのが尺度ですね。

 

③治療効果の因果関係を確定できる方法を用いる

事例研究などのことです。
例えば、単一事例実験は一人の事例について、非治療期と治療期の2つの時期の症状を比べて、治療効果を調べるものです。

前後で症状が変化すれば効果があったことがわかります。

 

④効果量の算出

心理療法の効果量を次の計算によって求めることができるようになりました。

・効果量=(治療群の平均値-対照群の平均値)÷対照群の標準偏差値

この式によりどのような心理療法も効果量という量的な測定が可能になりました。

 

メタ分析と論争の結論

お伝えした、④の効果量の算出ができるようになったことに加えて、メタ分析という方法も開発されました。

このメタ分析が最初にお伝えしたアイゼンク・バーギン論争に決着をつけます。

メタ分析は過去に発表された論文データを統計的手法を用いて結合する方法を指します。

スミスとグラス(Smith&Glass,1977)は、375件の研究結果を調べてその平均値を求めました。

その結果効果量の平均は0.68と算出されました。

この0.68という効果量は、心理療法に明確な効果があることを示すものであり、「心理療法に効果はあるか?」について論争を繰り広げたアイゼンク・バーギン論争に終止符を打つことになりました。

つまり、「心理療法には効果がある」という結論を科学が示したということになります。

 

効果研究のその後

メタ分析の発見により心理療法に効果があることは示されました。

しかし、メタ分析に対しては条件の統制などにおいて質の悪い研究が混ざったまま研究されているなど批判がありました。

そこで、シャピロとシャピロ(Shapiro&Shapiro,1982)は、質の高い研究のみ厳選して再度メタ分析を行いました。

その結果、心理療法の効果量は0.93と算出され、心理療法に高い効果があることがあらためて示されたのです。

近年ではこのメタ分析は心理療法全体ではなく、個別の心理療法に行われています。

個別心理療法ごとのメタ分析でわかったことは、例えば、認知行動療法は不安や抑うつには効果量が高いが、恐怖症には効果量が低く、行動療法はその逆といったように個々の心理療法によって何に効果を持つのかが変わってくるということです。

つまり、症状によって技法を使い分けるべきということが示されたわけです。

現在の心理療法はこの考え方に則っています。

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