【E.R.カンデル】歴史から抹消?精神分析を救った神経科学者

ロフタスというカリスマ

1980年代に突如現れたエリザベス・ロフタスは精神分析とその創始者を追い詰めました。

ロフタスはアメリカの認知心理学者で、虚偽記憶研究の世界的権威です。

スタンフォード大学で修士号・博士号を取得した後、精力的な活動を見せ、2002年には20世紀で最も影響力のある心理学者100選で女性最高位の順位(58位)を獲得しています。

 

これは自然な流れなのかもしれませんが虚偽記憶研究のカリスマが目をつけたのはフロイトの抑圧説でした。

フロイトの抑圧説は心理学の世界ではよく知られた概念です。

抑圧説とは簡単にいうと、何かしらのトラウマが無意識の中に抑圧されており、その抑圧されたトラウマが症状となり精神疾患を引き起こすという考え方です。

 

フロイトと精神分析の危機

ロフタスが虚偽記憶を研究していた頃、神経科学の世界では記憶に関連する海馬の機能が解明されていました。

彼女はこの海馬の機能を根拠に記憶を保存する神経メカニズムは存在せず、フロイトがいう抑圧されたトラウマは思い出された嘘に過ぎないと言って精神分析学を追い詰めました。

 

しかし、このロフタスの主張に対して2000年にノーベル生理学賞を受賞したエリック.R.カンデルが反論します。

カンデルは実験を行い、記憶を抑圧する神経メカニズムの存在を証明しました。

つまり、神経科学的にトラウマを抑圧するメカニズムは存在することを示したのです。

カンデルのこの研究により、フロイトと精神分析は窮地を免れました。

 

カンデルと精神分析

なぜカンデルがこのような反論を行ったのかは疑問に残りますが、僕は2つの要因があると考えています。

1つ目はカンデル自身が記憶をテーマに研究していた神経科学者であったことが挙げられます。

カンデルはアメフラシのニューロン研究から長期記憶に関する重要なデータを発見するなど、記憶研究の第一人者として知られています。

ロフタスの虚偽記憶に関する研究ももちろん自分の領域の研究としてよく知っていたのでしょう。

 

2つ目はカンデル自身がかつて精神分析医を目指していたことが挙げられます。

海馬手術の失敗から海馬の機能解明がなされ、カンデルはそれを機に神経科学者へと進路を変えています。

精神分析に思い入れがないと精神分析医を目指そうとはしませんから、ロフタスが精神分析を追い込んだことに反論しようとしたことは自然なことだと言えるでしょう。

いずれにせよ、エリザベス・ロフタスというカリスマ心理学者によって、危うくフロイトも精神分析も歴史から抹消されかけたのは間違いないことです。

 

カンデルがいなければフロイトも精神分析も歴史から消え去ることになっていたかもしれません。

心理学の専門家から見ると神経科学者は縁のない人たちのように思えますが、カンデルは「季節性うつ」の発見など心理学に関連する様々な発見をしています。

特にカンデルの研究については、一度目を通しておくととても参考になります。

 

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