セルフヘルプグループとは?ピアサポート事業の問題点

セルフヘルプグループとは?

皆さんはAAや断酒会という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

これらはセルフヘルプグループ(自助グループ)と呼ばれる団体です。
セルフヘルプグループとは依存症や病気(依存症も病気です)の当事者たちが定期的に集まり、情報共有・活動を通して支え合う団体のことです。

AAはアルコホーリックスアノニマスの略です。AAは断酒のための自助グループで、世界的な広がりを見せています。日本では同じように断酒会というものがあり、アルコール依存症の当事者たちが当事者間で支え合い活動されています。

アルコール依存に限らず、薬物依存や性的マイノリティ、精神疾患等無数のセルフヘルプグループが存在します。
セルフヘルプグループにおいて重要なのは当事者間での情報共有と支え合いです。

僕はあるアルコール依存症の方のお話を聞きにいったことがありますが、その方は「精神科医でも臨床心理士でも私たちのことはわからないですよ。当事者じゃないとわからない。」と発言されていました。

この言葉はセルフヘルプグループという存在の重要性をよく表していると感じました。

精神科医や僕たちのような心理学の専門家は、あくまで理論上でしか病気のことを知りません。
しかし、当事者の方々はまさにその病気を体験されている方たちです。

そして、その病気を治すために僕たちの想像を絶する努力をされています。
僕自身、5年ほど前に自律神経失調症という不可解な病にかかったことがあります。

確かに医者や心理士の方々は一生懸命治療しようとしてくれるのですが、何かずれていて結局治療やカウンセリングは効果がありませんでした。そこで僕は整体師の資格を取り自分の身体で仮説検証を繰り返して、3年後にようやく完治させました。

この時、参考にしたのは多くの人の体験談と自分自身の経験でした。

セルフヘルプグループの重要性の一つに情報共有があるとお伝えしましたが、同じ当事者の人たちの症状やこれまでの経緯、どうやって対処しているかなどは今まさに病に苦しんでいる身としては大変参考になることばかりでしょう。

ですから、セルフヘルプグループという存在そのものが支え合いの場となり、当事者に力を与えてくれるものなのです。
ちなみにセルフヘルプグループへの参加は科学的にも治療効果が高いことが示されています。

 

セルフヘルプグループと外部交流

セルフヘルプグループにはオープンで行なっている団体とクローズドで行なっている団体があります。
オープンで行われている団体では、専門家や当事者でない一般の方も参加することができます。

クローズドで行われている団体は、当事者が話しにくい等のことを考慮されています。
とはいえ、オープンの団体もプライバシーにとても配慮された上で、外部の人たちとの交流も取り入れています。

どちらが良い悪いではありません。
団体によっては普段クローズドで行なっているけれど、この日はオープンにしようなどと変化をつけているところもあります。

セルフヘルプグループが専門家を招き入れることはよくあることです。

例えば、精神科医や臨床心理士がセルフヘルプグループに招かれて、依存症について講演を行うというようなことはよく行われています。
これは自分の病が 医学的・心理的にはどのように理解されているのか?

効果が科学的に示されている治療にはどんなものなのかを知りたいというのは当事者の自然な感情でしょう。

ですから、外部の専門家を呼ぶことは意味あることだと言えます。

さて、専門家をセルフヘルプグループに呼ぶのは理解できることです。では、一般の人を受け入れているセルフヘルプグループは何を目的にしているのでしょうか?

様々な目的はあると思いますが、僕が一番多いと思うのは「自分たちの存在を世間に認知してもらう」ことだと思います。
セルフヘルプグループが結成される依存症や病気は、世間の理解が乏しいものが多いです。

例えば、うつ病にしても世間は「メンタル弱いんだね」「気合が足りない」とか感じている人がいます。
しかし、うつ病というのは明らかな精神疾患であり、治療すべき病です。

セルフヘルプグループに一般の人たちを招き入れたり、彼らが街に出てパレードを行ったりする(リカバリーパレード)という背景にはこういった世間の無理解や認知度の低さがあります。

これはどの分野にも言えることですが、認知度が低いと社会的に問題とならず支援が行き届きません。
脳科学研究が近年一気に進んだのもその必要性が社会的に認識されたからです。

そのため、一般の方々をオープンなセルフヘルプグループで招くことはとても有益なことであり、また、リカバリーパレードなどの活動を通して広く社会的に認知されることも望まれることです。もちろん当事者のプライベート保護・意思尊重が最優先されることは言うまでもありませんが。

 

ピアサポート事業の問題点

近年、こうしたセルフヘルプグループを国が医療現場に生かそうとする試みがなされています。それがピアサポーターの雇用です。ピアサポーターとは、一定の研修(2、3日程度)を受けた当事者のことを指します。ピアサポーターに認定された当事者は一定の給料を得て医療現場で働く事が可能です。

一見するととても良い話なのですが、最近このピアサポーターの雇用に関して当事者を中心に疑問が寄せられています。
実はピアサポーターの中にはセルフヘルプグループに参加した事がない人がいます。セルフヘルプグループはここまでお伝えしてきた通り、当事者同士が情報を提供しあい、改善に向けて協力し合う場です。

国もそのような様子を見て、当事者が医療現場に入る事で患者の支援に繋がると考えたのでしょうが、当のピアサポーターが一度もセルフヘルプグループへの参加を経験していないという事態が散見されるのです。

このような事が生じる原因はお金の問題です。

セルフヘルプグループのほとんどは参加しても基本的に給料等は出ません。
しかし、このピアサポーターになれば当事者という立場を使って医療現場という安定した業界で雇用される事が可能となります。

これは当事者にとって願ってもない話です。
しかし、現実問題としてピアサポーターとして雇用されたとしても、セルフヘルプグループで活動していない人の場合、医療現場でどういった支援を行えば良いのかさっぱりわからないという事態が起きます。

そのため、そういったピアサポーターは現場で近くにいる看護師やソーシャルワーカーの仕事を見よう見まねで行うようになります。
こうして本来、ピアサポーターとしての役割を担う人間が3流の看護師みたいな存在になり機能しないという事が生じます。

この問題を解決する方法は簡単です。
一定期間セルフヘルプグループでの活動を義務付けることでクリアできます。

しかし、国の事業というものは法律ありきです。
一度決まった法律を簡単に覆すことはできません。

まさに「言うは易し、行うは難し」状態に陥っているわけです。

個人的にはピアサポーターとして雇用された人たちは「自主的にセルフヘルプグループに参加する」という研鑽を積む精神を持ってもらうしかないと思っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です