僕の愛読で、社会心理学の名著である『影響力の武器』から「返報性の法則」を取り上げ、心理学がビジネスにどのように応用されているのかに、また「影響力の武器の危険性」ついてお伝えしたいと思います。

 

アムウェイ社

『影響力の武器』で取り上げられている会社の一つに、アムウェイ社があります。

アムウェイ社はアメリカのミシガン州に拠点を置く会社で、日用品・生活必需品などの販売を行なっています。

僕の印象でいうと、アムウェイ社は化粧品の販売を中心に行なっているイメージがあります。

アムウェイについては、洗脳・マルチ商法問題などで、日本においては問題となることがあります。

実際、裁判が起きていますし、僕自身もアムウェイに洗脳されたという人のカウンセリング(デプログラミング)を行なったことはありますが、今回はそこには触れません。

そうではなく、中立の立場で、「どのような心理テクニックが同社の販売戦略に隠れているのか?」という点に絞ってお伝えしていきます。

 

『影響力の武器』

さて、内容に入っていく前に、『影響力の武器』について簡単に紹介しておきましょう。

『影響力の武器』は、人間の自反応について記述した良書です。

「はじめに」では、動物の自動反応についての記載があり、例えば、七面鳥のヒナが「ピー」と鳴くと、すぐに親鳥はヒナに餌を与えるという研究が書かれています。

この研究では、ヒナをぬいぐるみに替えて、録音したテープで「ピー」と鳴かせても、親鳥はヒナに餌を与えようとすることが示されました。

一方で、ヒナが鳴かないようにすると、親鳥は自分の子どもであるヒナを攻撃したり、殺したりしました。

そして、他の動物に関しても、次々と同様の研究結果が示されました。

つまり、動物はある一つの刺激に対して、異常なまでに反応することが示されましたということです。

「人間にも自動反応が存在するのでは?」という考えが研究者たちに広まり、自動反応の研究対象は人間にも広がりました。

研究の結果、やはり人間にも6つの自動反応が存在することが突き止められたのです。

6つのバイアスとは、以下のものです。

①希少性

②返報性

③コミットメントと一貫性

④社会的証明

⑤好意

⑥権威

 

「バッグ」戦略

アムウェイ社に話を戻しましょう。

アムウェイ社の販売売上を爆発的に増加させたのは、「バッグ」という手法です。

これはアムウェイ商法と言われるほど、有名な販売戦略です。

「バッグ」はその名の通り、小さいカバンの中にアムウェイ社の製品を入れておき、「自由に使ってください」と言って、家庭に置かせてもらう手法です。

この手法は恐ろしいほどの売り上げを伸ばしました。

「バッグ」を使った驚異的な売り上げは、アムウェイ社の各支部から喜びの悲鳴が本部に集まったほどです。

「小さいカバンの中に製品を入れておき、家庭に置かせてもらう」というシンプルな手法が、なぜこんなに成果を上げたのでしょうか?

 

返報性の法則

アムウェイ社の「バッグ」戦略成功の陰には、自動反応である「返報性」が大きく関係しています。

返報性は、「恩を受けたら同じだけの恩を返さねばならない」という自動反応です。

わかりやすい例としては、スーパーの試食が挙げられます。

少し試食したら、何か買わないといけないと感じてしまう心理状態は誰しも経験したことがあるでしょう。

これは「返報性の法則」と呼ばれ、人が持つ心理バイアス(認知の偏り)です。

アムウェイ社の「バッグ」戦略で使われる製品を詰めたカバンの中には、化粧品などが入っており、自由に使って良いことになっています。

そのため、バッグを受け取った見込み客は、試しにバッグの中身の化粧品を使うことになります。

こうしてバッグの中身を使った客は、まんまと「返報性の法則」の罠にひかかるわけです。

見込み客の心理はこうです。

「無料で使わせてもらったんだから、少しは買わないと」

まさにスーパーの食品売り場で行われている試食と同じ戦略が取られているわけです。

 

自動反応の脅威

「返報性の法則」をはじめとした『影響力の武器』で取り上げられている6つの自動反応は、とてつもなく強力な反応です。

自動反応は初めにお伝えしたように、動物に生存戦略としてあらかじめプログラムされた反応だからです。

これらの反応は、多くの場合、上手く機能します。

今回取り上げた「返報性の法則」について考えてみると、恩を受けたら恩を返すというのは、社会的に正しいことです。

恩を受けて何のお返しもしない人は、嫌われます。

誰もそんなことは望まないから、誰もが恩を受けたらきちんと恩を返すのです。

しかし、世の中にはこの影響力の武器を利用して、自分の都合の良いように相手を利用しようとする人たちがいます。

自動反応を知らないということは、暴漢に素手で挑もうとしているようなものです。

『影響力の武器』の著者、ロバート.B.チャルディーニは、自動反応のことをカセットテープに例えています。

まるでカセットテープのボタンを押したら、サーとテープがまわるようにこれら6つの自動反応が起こるということです。

「カチッ・サー」

皆さんの心の中にも、自動反応のテープは存在します。

充分に気をつけてください。

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